苦熱口占

炎熱烘廬夏日長
淋漓流汗拭顔忙
不知滅却心頭術
掩卷欲貪團扇涼

2020年7月

押韻

下平声七陽韻

訓読

苦熱口占

炎熱 廬を烘りて 夏日 長し
淋漓たる流汗 顔を拭ふに忙し
知らず 心頭を滅却するの術
巻を掩ひて貪らんと欲す 団扇の涼

口占:口ずさむ
:あぶる
淋漓:液体がたらたらと滴るさま
滅却心頭:(暑いと感じる)心を消し去ってしまう。 杜荀鶴《夏日題悟空上人院》「安禪不必須山水 滅却心頭火亦涼」 
掩卷:本を閉じる

暑さに苦しんで口ずさむ詩

燃えるような暑さが粗末な我が家をあぶり、夏の一日が長くつづく
ぽたぽた流れる汗がとまらず、顔をぬぐうのにいそがしい
「心頭を滅却すれば火も亦た涼し」というが、俗人の自分はそんな術を知るわけもないので
読みかけの本を閉じて、うちわの涼風をむさぼることとしよう

補足

春風吟社8月提出の題詠です。杜荀鶴の有名な詩句を下敷きにして無難にまとめただけの詩ですが、エアコンも扇風機もない我が家では、うちわが唯一の暑さをしのぐ道具なので、結句は実生活を反映しています。