賀藤井聡太七段就棋聖

守若泰山攻迅雷
縱橫機變亦奇哉
神童無奈未知酒
凡骨替君傾祝杯

2020年7月

押韻

上平声十灰韻

訓読

藤井聡太七段の棋聖と就るを賀す

守るは泰山の若く 攻むるは迅雷
縦横の機変 亦た奇なるかな
神童も奈んともする無し 未だ酒を知らざるを
凡骨 君に替はりて祝杯を傾けん

泰山:中国山東省にある山。力強く盤石であることのたとえとして用いる。
攻迅雷:「攻如迅雷」の「如」を省略している。句中対ではこのような省略がよく用いられる
機變:臨機応変のはかりごと
無奈:どうしようもない
凡骨:平凡な人物。作者のこと。

藤井聡太七段が棋聖になったのを祝う

その守りは泰山のように盤石で、攻めは迅雷のようにすばやく激しい。
縦横無尽、臨機応変の手のなんと見事なことか
そんな神童でもまだ酒が飲めないのはどうしようもないから
この平凡な男が君のかわりに祝杯を傾けることとしよう

補足

2020年7月16日、藤井聡太七段(当時)が棋聖位を獲得し、タイトル獲得最年少記録(17歳11か月)を更新したのを詠んだ詩です。未成年の神童は酒が飲めないから、代わりに祝杯を挙げてあげようという、呑兵衛根性丸出しのどうしようもない詩ですが、前半でその力量をたたえ、後半で史上最年少の若さを詠み込んでいるので、時事ネタの詩としては内容に過不足ないものかと思います。

なお、この詩を作った直後、藤井七段は、8月20日には王位も獲得して二冠となり、同時に八段に昇段し、このいずれも史上最年少記録(18歳1ヶ月)を更新しています。