奉頌卽位大典

秋霖遽霽彩虹新
令日和風恰似春
一億蒼生歡喜遍
微躬忝覯此昌辰

2020年

押韻

新・春・辰:上平声十一真韻

訓読

即位の大典を頌し奉る

秋霖 遽かに霽れて 彩虹 新たに
令日の和風 恰かも春に似たり
一億の蒼生 歓喜 遍し
微躬 忝くも覯ふ 此の昌辰

卽位大典:即位礼正殿の儀をはじめとする一連の儀式。「大典」は国家の重要儀式。
頌:偉大なものや偉人、君主、神などを賛美する、ほめたたえる
秋霖:秋の長雨
令日:よい日。めでたい日。吉日。
和風:おだやかな風
蒼生:人民、国民。
微躬:自分の謙称。文字通りには、ちっぽけなつまらない身、の意。
忝:かたじけない。ありがたい。もったいない。畏れ多い。
覯:会う。出会う。おもいがけなく出会い見る。
昌辰:盛時に同じ。国運隆盛の時代。すばらしい御代。 蘇軾《集英殿秋宴教坊詞·教坊致語》「臣等幸覯昌辰」

即位の大典をたたえ奉る

降り続いていた秋雨がにわかに晴れ上がって色鮮やかな虹が新たにかかり
このすばらしい日のおだやかな風はまるで春のようだ
一億の国民の歓喜はあまねく広がっている
私のようなつまらない者がこの素晴らしい御代にめぐり合わせたことはありがたく畏れ多いことだ

補足

10月22日即位の礼当日は、朝から雨が降り続いていましたが、即位礼正殿の儀が始まると晴れ上がり、さらに虹が出たということで、マスコミからネット界隈まで大いに盛り上がりました。もちろん偶然なのでしょうが、偶然に意味を与えるのが文化とも言えます。詩にする以上、この現象を取り上げない選択肢はないので、起句に詠んでおきました。

なお、承句の「令日和風」はもちろん「令和」にちなんでやや強引に入れたものです。