秋夜懷舊

宿昔雄心空化灰
孤燈明滅老蛩哀
何方可遡出郷日
半世蹉跎圖挽回

2019年10月

押韻

灰・哀・回:上平声十灰韻

訓読

秋夜 旧を懐ふ

宿昔の雄心 空しく灰と化し
孤燈 明滅して 老蛩 哀し
何れの方ありてか 出郷の日に遡りて
半世の蹉跎 挽回を図るべき

宿昔:むかし。以前。
老蛩:年老いたコオロギ
何方可~:どんな方術を使えば~できるだろうか。陸游《梅花絶句》「何方可化身千億 一樹梅前一放翁」
半世:半生に同じ。
蹉跎:つまずくこと。失敗すること。

秋の夜、昔のことを思う

昔いだいていた雄々しい心は今やむなしく灰となり
ひとつだけのさびしい灯火が消えかかり、年老いたコオロギが物悲しく鳴いている
どんな方術を使えば、意気揚々と故郷をあとにしたあの日に戻って
わが半生の挫折の挽回を図ることができるだろうか

補足

春風吟社の題詠で作った詩です。昔のことを思い出して、「あの頃に戻ってやり直せたらこうするのになあ」というのは、誰しも一度はふけったことのある非生産的な妄想だと思いますが、陸游の詩で使われていた表現を利用して、それを詩にしてみました。