山寺觀楓

宿霧濛濛鐘韻寒
石磴帶露步愈難
數株霜葉何宜比
淡墨圖中一抹丹

2018年10月

押韻

上平声十三寒韻:寒・難・丹

訓読

山寺 楓を観る

宿霧 濛濛として 鐘韻 寒く
石磴 露を帯びて 歩 愈々 難し
数株の霜葉 何にか宜しく比すべき
淡墨の図中 一抹の丹

宿霧:前夜からたちこめる霧
濛濛:煙るようにぼんやりしているさま
石磴:石段
:たとえる
:赤の絵の具。硫化第二水銀。

山寺でカエデを見る

昨晩からの霧で景色はぼんやりして鐘の音も寒々しい
石段には露が降りてますます歩きにくい
何本かのカエデが紅葉しているさまは何にたとえるのがいいだろう
薄墨でかかれた絵の中で、そこだけ赤の絵の具をひと塗りしたかのようだ

補足

春風吟社11月提出の題詠です。オーソドックスすぎる題でかえって難しいところがありますが、まわりの景色をぼんやりさせてカエデの赤に焦点があたるようにしました。ちなみに「楓」という漢字は本来「フウ」というカエデとは別の植物を指す感じですが、日本ではカエデを指す感じとして用いられており、日本の漢詩でも「楓=カエデ」として用います。