秋夜書斎

露氣侵窗亂帙沾
蛩聲斷續夜寒添
莫言識字多憂患
險韻詩成茶自甜

2018年9月

押韻

下平声十四塩韻:沾・添・甜

訓読

秋夜書斎

露気 窓を侵して 乱帙 沾ひ
蛩声 断続して 夜寒 添ふ
言ふ莫かれ 字を識れば憂患多しと
険韻の詩 成って 茶 自ら甜し

亂帙:散らかった書物。「帙」はふまき、ふみつづみ、和綴じの書物を包む覆い。 菅茶山《冬夜讀書》「閑收亂帙思疑義」
識字多憂患:蘇軾《石蒼舒醉墨堂》「人生識字憂患始 姓名粗記可以休(なまじ学問をして字がわかるようになるのがわざわいや心配事の始まりだ、自分の氏名が書けるくらいでやめておくのがよい)」
險韻:詩を作るのが難しい韻。各韻目に属する字の数は一定ではないため、属する字が少ない韻は、難しい韻となる。 李清照《念奴嬌・春情》「險韻詩成 扶頭酒醒 別是閒滋味」
:あまい。うまい。

秋の夜の書斎

外の露の湿気を含んだ空気が窓から入ってきて散らかった書物がしめり
コオロギの声が途切れ途切れに続き、夜の寒さが増してくる
学問をして字を知ればかえって心配やわざわいが多くなるなどと言わないでくれ
難しい韻の詩が出来上がったあとで飲むお茶は自然とおいしく感じるのだ

補足

蘇軾の「人生識字憂患始」をもじって作ってみました。