新選組

腥風吹遍鴨河涯
奔巷登樓閃劔花
明日死生何要問
只期誠節莫微瑕


2018年6月

押韻

下平声六麻韻:涯・花・瑕

訓読

新選組

腥風 吹き遍し 鴨河の涯
巷を奔り 楼に登りて 剣花を閃かす
明日の死生 何ぞ問ふを要せんや
只だ期す 誠節に微瑕の莫きを

鴨河:鴨川
登樓:妓楼に通って遊ぶことを「楼に登る」ということもあるが、ここは妓楼に踏み入る意味
劔花:剣と剣が打ち合って出る火花
誠節:誠のみさお。いつわりのない節操
微瑕:ほんのわずかな傷

新選組

なまぐさい風が鴨川のほとりにあまねく吹きわたっていた幕末
彼らはあるいは路地裏を走り、あるいはお茶屋に踏み入って、刀の火花を散らした
そんな彼らにとって、わが身の明日の生死などどうして問題にする必要があっただろう
彼らが強く心に思っていたのは、幕府に対する誠の忠節がほんの少しでも欠けることがないようにということだけだったのだ

補足

時代劇専門チャンネルで栗塚旭主演の『新選組血風録』(1965~66)が放送されていて、最初は「さすがにモノクロの時代劇は・・・」と思っていたのですが、実際に見てみるとなかなか面白くてはまってしまいました。原作の司馬遼太郎先生が「本物やないか!」と驚嘆したという栗塚旭演じる土方歳三がかっこいいのはもちろんですが、春日八郎が歌う主題歌『新選組の旗は行く』が一度聞くとついつい口ずさまずにいられない印象の強さで、すっかり感化されて詩を作りました。転句は『新選組の旗は行く』の歌詞「明日はこの身が散らば散れ」を意訳して使わせてもらっています。