喫茶偶成

茗圃薰風凝椀中
碧川滾滾瀉吾胸
賣茶翁訓方心得
忘味始知慈味濃

2018年4月

押韻

上平二冬韻:中(一東韻から借韻)・胸・濃

訓読

喫茶偶成

茗圃の薫風 椀中に凝り
碧川 滾滾として 吾が胸に瀉ぐ
売茶翁が訓へ 方に心得す
味を忘れて始めて知る 慈味の濃やかなるを

茗圃:茶畑
滾滾:水がさかんに流れるさま
賣茶翁:延宝3年(1675年)生。黄檗宗の禅僧で、煎茶道中興の祖とされる。幼少のころに両親をなくし、肥前の龍津寺に入って出家した。師の没後の享保7年(1722年)、弟弟子に後を託して寺を去り、京都に移って「売茶」(いわば移動式喫茶店)の生活を始め、88歳で亡くなるまで、貧しくも自由な生き方を貫いた。
:今まさに
忘味始知慈味濃:賣茶翁《通天橋開茶舗》「通仙秘訣吾無隠 忘味應知滋味濃」

お茶を飲んでたまたま作った詩

茶畑の薫風がお椀の中に凝縮したかのようなお茶
これを飲むと緑の川が胸の中にこんこんとそそぎこんでくるかのようだ
売茶翁の教えを今まさに心から理解できた
味というものを忘れ去ってはじめて奥深い味を知ることができるのだ

補足

あるきっかけで久しぶりに読んだ売茶翁の詩に触発されて作った詩です。結句は売茶翁自身の句をほぼそのまま使用して、売茶翁へのオマージュとしています。