溪上看梅【2018.01】(渓上 梅を看る)
溪上看梅
數戸山家絶莫聲
半殘靑旆起哀情
梅香髣髴伊丹酒
澗響依稀筑紫箏
2018年1月
押韻
下平声八庚韻:聲・生・箏
訓読
渓上 梅を看る
数戸の山家 絶えて声 莫く
半ば残する青旆に 哀情起こる
梅香 髣髴たり 伊丹の酒
澗響 依稀たり 筑紫の箏
注
殘:そこなう。こわれる。破れる。
青旆:酒屋・飲み屋の旗。
哀情:もの悲しい気分
髣髴・依稀:どちらも、よく似ているさま。「髣髴」は仄仄、「依稀」は平平。
伊丹酒:伊丹は江戸時代初期に清酒の本格的な大量生産が始まった「清酒発祥の地」であり、摂泉十二郷の筆頭として伊丹の酒は江戸で高い人気を博した。江戸後期以降、灘五郷の台頭によりその地位を奪われ、幕末以降は多くの蔵元が廃業したり灘へ移転したりしたが、今もなおいくつかの蔵元が伊丹で酒造りの伝統を守っている。
筑紫箏:近世初期に雅楽や歌謡、中国の琴などをもとに作り出された箏曲。またそれに用いられる箏。
訳
谷川のほとりで梅を見る
何軒かの山家から声は全く聞こえてこず
半ば破れかかった飲み屋の旗を見ると、もの悲しい気分になる
梅の香りは、かつて飲み屋で出されていた伊丹の酒を髣髴とさせるし
谷川の響きは、かつて宴で奏でられていた筑紫箏の調べを思い起こさせるのだ
補足
春風吟社2月の題詠です。転結の対句を先に思いつき、それに合わせて起承を作ったのですが、詩題から少し焦点がずれた感じになってしまいました。
コメント
0 件のコメント :
コメントを投稿