功山寺懷高杉東行【2016.04】(功山寺にて高杉東行を懐ふ)
功山寺懷高杉東行
何甘亂世作能臣
一擧回天宿志伸
死地楽生豪勇極
欽君枕冑夢佳人
2016年4月
押韻
臣・伸・人:上平声十一真韻
訓読
功山寺にて高杉東行を懐ふ
何ぞ甘んぜんや 乱世に能臣と作(な)るに
一挙 天を回らして宿志 伸ぶ
死地に生を楽しむは豪勇の極み
欽ふ 君が冑に枕して佳人を夢みしを
注
功山寺:山口県下関市にある曹洞宗の寺。元治元年12月15日(1865年1月12日)、高杉晋作はこの寺で挙兵し、幕府への絶対恭順を主張して藩政を握っていた俗論派を打倒して藩内クーデターを成功させた。
高杉東行:高杉晋作。「東行(とうぎょう)」は晋作の号。歌人西行をもじったもの。
亂世作能臣:乱世にもかかわらず、平時にそつなく役目をこなすタイプの家臣となる。この句は三国志で有名な曹操が若いころ、人物鑑定家の許劭に「治世の能臣、乱世の奸雄」と評された故事を踏まえているので、ここでの「能臣」には「平時に限った能臣」というネガティブなニュアンスが含まれる。
回天:天をめぐらすように天下の形勢をひっくりかえす大事業をなしとげる
宿志:かねてからの志
死地:命をうしないかねない極めて危険な場面、場所。
欽:したい、うやまう。
冑:かぶと
佳人:美人。高杉晋作自身の詩に「只有金鎖甲、枕之夢美人」(慶応元年8月作の『偶成』)とある。
訳
功山寺で高杉晋作のことを思う
時代は幕末の乱世、平時のようにそつなく役目をこなす家臣になど、どうして君が甘んじることがあろうか
君はすべてをなげうっていっぺんに天下の形勢をひっくり返す大事業をなしとげ、かねてからの志をとげたのだ
命を失いかねないような危険な場面でも生きていることを楽しむというのは豪勇の極みである
君が戦のさなか、かぶとを枕にして眠り、美人を夢に見たことを、私は慕い敬うのだ
補足
先日開催された全日本漢詩大会京都大会で京都市教育長賞をいただいた詩です。汎兮堂詩稿の更新はなかなか進まず、2009年の作品で止まってしまっているのですが、せっかく賞をいただいたので、制作順にこだわらず、先に掲載することにしました。
2014年7月に山口を旅行したときに功山寺を訪ねたので、それを詩に詠もうとしたのですが、未完のままになっていたのを、今年になって手を加えて完成させたものです。
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