設楽原覽古【2012.07】
設楽原覽古
先君霸業一朝亡
死馬不瞑屍抱槍
十里田疇今駘蕩
叢中胡蝶夢猶央
2012年7月
押韻
下平声七陽韻:亡・槍・央
訓読
設楽原覧古
先君の覇業 一朝にして亡び
死馬は瞑せず 屍は槍を抱く
十里の田疇 今 駘蕩
叢中の胡蝶 夢 猶ほ央ばなり
注
覽古:昔を思う。古跡をたずねて当時をしのぶこと。
設楽原:設楽ヶ原(愛知県新城氏)。天正3年5月(1575年6月)、織田信長・徳川家康連合軍と武田勝頼軍との間で長篠設楽原の戦い(長篠の戦い)が行われた古戦場。馬防柵に守られた鉄砲隊を主力とする織田・徳川連合軍が武田軍を壊滅させる大勝をおさめた。
先君:先代の主君。武田勝頼の父・武田信玄。
十里:漢詩文における一里は約400メートル。
駘蕩:春ののどかなさま。「駘」は平仄両用。
訳
設楽ヶ原古戦場での懐古
ここでの惨敗によって先代の信玄の覇業はたちまち崩れ去り
銃弾に斃れた馬たちは目を見開いたまま死に、兵たちは槍を抱いたまま屍となった
時は流れ、今では十里四方にのどかな春の田畑が広がり
くさむらの中の蝶々は夢を見ている最中だ
補足
設楽ヶ原を訪ねた際の詩です。現地には、織田・徳川連合軍が築いたとされる馬防柵が部分的に再現されています(写真参照)。
実際に設楽ヶ原を訪ねたのは夏でしたが、この詩が夏でなければいけない理由はないので、転結をのどかな春の景色にして、当時の壮絶な戦いの様子と対比させることにしました。
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