綠陰幽居【2025.05】
綠陰幽居
獨擅薰風午枕高
樗陰養拙老閑郊
久扃柴戶密蛛網
姑假蓬簷喧燕巢
銷日酒唯知冷暖
餞春詩未了推敲
無能無用自無客
蔽徑叢林非礙交
2025年5月
押韻
下平声三肴韻:高(豪韻からの借韻)・郊・巢・敲・交
訓読
緑陰幽居
独り薫風を擅にして 午枕 高く
樗陰に拙を養ひて 閑郊に老ゆ
久しく柴戸を扃ざして 蛛網 密に
姑く蓬簷を仮して 燕巣 喧し
日を銷する酒は 唯だ冷暖のみを知り
春を餞りし詩は 未だ推敲を了らず
能 無く 用 無ければ 自づから客 無し
径を蔽ふ叢林 交を礙ぐるに非ず
注
樗:ヌルデ。ウルシ科の落葉高木。材質が柔らかく木材として使えないので「役立たず」の代名詞でもある。なお、「あふち」と訓ずるが、日本で言うオウチは楝(栴檀)であり「樗」ではない。
蛛網:蜘蛛の巣。 雍陶《秋居病中》「荒簷數蝶懸蛛網 空屋孤螢入燕巢」
冷暖:冷たいか暖かいか。「冷暖自ら知る」という成語に言う通り、口にした物の冷暖は人に言われずとも自分でわかるものであるから、「誰でもわかる冷暖のほかは何もわからない」と言うことである。
訳
緑陰の隠れ住まい
薫風を独り占めにして枕を高くして昼寝し
樗の木陰で拙い生き方を守りながら静かな田舎で年老いていく
長いこと閉じたままの柴の戸には蜘蛛がびっしり巣を張ってしまったが
しばらく軒先を貸してやった燕の巣が賑やかで寂しくはない
日々を過ごすために飲む酒は冷暖のほかは味も銘柄もわからぬありさまで
春を餞って詠んだ詩は出来が悪くて未だに推敲が終わらない
かくも無能で無用な男を訪ねてくる客がいないのは自然なことで
我が家に通じる小径を覆い隠して茂る林が交友を妨げているわけではないのだ
補足
春風吟社5月提出の課題詠です。頷聯と頸聯の対句が自然に出来上がったので律詩にしてみましたが、首聯と尾聯だけでも同じ詩題の絶句として通用します。律詩の作り方はいろいろありますが、絶句の真ん中に2組の対句を挿入する意識で組み立てると破綻なく出来上がる、というのがよく言われることです。

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